特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
血液生化学検査
酵素および関連物質
心筋型脂肪酸結合蛋白,ミオグロビン,トロポニンT,ミオシン軽鎖
栗原 理
1
,
大場 崇芳
1
,
清野 精彦
1
1日本医科大学千葉北総病院循環器内科
pp.174-176
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104730
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
循環器診療において,胸痛や呼吸困難をきたす疾患の鑑別は容易なものではなく,急性心筋梗塞,肺血栓塞栓症,急性心不全などの循環器疾患なのか,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患,あるいは逆流性食道炎などの消化器疾患,整形外科的疾患なのか,初診時に難渋することをしばしば経験する.現在,急性心筋梗塞を診断するために活用されている生化学マーカーにはさまざまなものがあるが,心筋傷害・壊死を早期より反映するマーカーとして心筋型脂肪酸結合蛋白,ミオグロビン,トロポニンT,ミオシン軽鎖などがある.
急性冠症候群などの虚血性心筋細胞傷害が生じると,まず細胞膜が傷害され,細胞質マーカー(ミオグロビン,心筋型脂肪酸結合蛋白)が血中に遊出する.虚血が軽度で短時間のうちに解除されれば,細胞質マーカーの上昇は軽微かつ短時間であり,心筋細胞傷害は可逆性である可能性が考えられるが,壊死に陥った場合には急峻かつ高値を示す.そして,虚血が高度かつ長時間に及んだ場合には,筋原線維が分解され,筋原線維マーカー(トロポニンT,ミオシン軽鎖)が血中に遊出する.この過程で,心筋細胞はすでに壊死に陥ったと判断される.なお,トロポニンTの6%は細胞質に存在しており,傷害の過程を反映して二峰性の遊出動態を示す1).
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