書評
救急救命士によるファーストコンタクト―病院前救護の観察トレーニング
谷川 攻一
1
1広島大大学院・救急医学
pp.176
発行日 2007年1月10日
Published Date 2007/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102708
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病院前救護には3つの決定的特徴がある.それは悪条件であること,医療資源が限られていること,そして移動を前提とするということである.したがって,優先順位に基づいた的確な観察と処置が現場活動の骨格となる.この特徴は医療機関内の救急発生現場においても基本的には同じである.
本書はこのような特徴をもつ病院前救護において,救命に必要とされる観察と基本的手技の実施法のポイントを極めてわかりやすく説明している.心拍出量の説明では“マヨネーズ”を,肺の酸素化障害の説明には“回転寿司”を例えている.“影絵”,“お年玉付き年賀葉書”,“ピサの斜塔”,そうそう,“山手線”も出てくる.誰にでもイメージしやすい“例え”のなかで,観察・処置のエッセンスを的確に紹介している.そして,後半には習得した知識の整理とポイントをより鮮明にするために,シナリオトレーニングができるように細かく配慮されている.その卓越した教育手法には敬服する.
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