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器質的脳障害のない,いわゆる慢性頭痛は日常臨床の場でもっとも多くみられる症状の一つであり,数多くの論文(PubMedではheadache約38,000編,migraineに限ると約18,000編)が発表されている.また頭痛に関する教科書も毎年多数出版されているわりには診療指針となる情報は多くない.2004年,15年ぶりに改訂された「国際頭痛分類 第2版」は系統的,合理的な分類と同時に詳細な解説を加えた188頁(日本語版)の大著であり,それ自体がガイドラインを構成しているが,厳密さを求めるあまり,説明が煩瑣,冗長であり,専門医は別として,一般には読みにくいと批判されている.
「慢性頭痛の診療ガイドライン」は他疾患のそれとは異なり,「国際頭痛分類 第2版」に準拠し,日常の臨床で取り上げるべきテーマについて,専門医のほか一般医をも対象として慢性頭痛の問題点をすべて抽出し,また患者団体の協力をも得て,臨床的課題を明確にした.すなわち,91の設問に分けてエビデンスをもとに解説が加えられている.まず,頭痛の一般的解説として,診断,治療のほか,病診連携,職場・学校での頭痛対策,OTCや漢方薬による対応法,その他,医療経済の記載もみられる.さらに,一次性頭痛(片頭痛,緊張性頭痛,群発頭痛),小児の片頭痛,薬物乱用頭痛,遺伝などのほか,「その他の一次性頭痛」についても多くの頁をさいている.この分類はいわばwaste basketの様相を呈しており,思いつくまま咳嗽,労作,性行為,睡眠時などに伴う雑多な頭痛が取り入れられており,その他,雷鳴頭痛(thunderclap headache),持続性片側頭痛(hemicrania continua),いわゆる慢性連日性頭痛(chronic daily headache)の分類上の問題など,第一版刊行後,厳しい検証を受けたがまだ議論の余地のある疾患もいくつか含まれている.
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