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病院は誰がタクトをとるか
橋本 寬敏
1
1聖路加国際病院
pp.3-5
発行日 1950年7月1日
Published Date 1950/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200163
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日本の病院に比較してアメリカの病院は色々の点で違つて居るが,最も著しい差異は管理者の在り方である。
日本の院長は医師であつて,医員を統率するだけの才能があると認められ,敬われるだけの人物が選ばれ,病院の管理者として,病院の行政全般をすべくくつて居るのであるが,経営事務には深入りしないのが普通だ。ところがアメリカに今ある大多数の病院の管理者は,医員をまとめることは,医員の主脳者に一任して,医療の指揮統制には関与しないで,医療を除いた病院行政にだけ専念して居る。職名は何とつけても,実際にホテルのマネージャーの様な仕事だけをして居る。従つて医療陣の主脳者に比べると,すこぶる目立たない存在である。アメリカの多くの病院は所謂開放式医員制をとつて居り,病院に働く医師は病院の職員ではなくて,病院から俸給を払わず,唯病院に患者を連れ込んで,病院内で診療することを病院が承認するだけであるのだから,病院の管理者は病院で診療する医師の守るべき規則を概括的にきめておくだけで,その指揮,統制などは殆ど出来ないのである。
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