書評
—郡山一明(著)—病院前救護学
南 浩一郎
1
1一般財団法人救急振興財団救急救命東京研修所
pp.648
発行日 2021年5月20日
Published Date 2021/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213357
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「病院前救護学」というと今まではそれを簡潔明瞭に説明できる書はなかったように感じる.そもそも,救急救命士制度は1991(平成3)年4月23日に救急救命士法が制定されて制度化された.成立してわずか20年しか経過していない新しい制度である.『病院前救護学』の著者である郡山一明先生は,その創生期から救急救命士教育の中心となり活躍されてきた.病院前救護学とは何かを問うには,著者をおいて他にはいないのではないかと私は思っていた.
この本の大きな特徴は,著者が救急医療,救急救命士養成,救急医療行政という3つの最前線に立っていた経験に基づき,病院前救護とは何かを三次元的視点から簡潔明瞭に述べている点である.医療関係者からの視点のみの場合,ややもすると「病院前救護学」を疾患別に対応する救護マニュアルにしてしまいがちになる.また,そのような著書は救急医向けには多く書かれている.また,救急救命士養成者の視点からでは,何を教えればよいのかという教育論になりがちである.また,行政に携わってきた人によると,行政からみた救命士制度論になってしまう.本書は,「病院前救護とはどういうものか?」という問いに,病院前救護の定義,現場論,チーム論,訓練論,人材育成論,地域解析論,将来的な救命士像という視点から解析し,体系化している.
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