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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
肺炎の症例では,肺炎球菌,レジオネラ,インフルエンザ菌などの抗原が尿中に排泄されることが1970年代よりしばしば報告されていた.特に肺炎球菌では病初期から莢膜多糖抗原が尿中に排泄されていることが知られており,その排泄は血中抗原の濃縮を意味することから診断的意義が高いものと考えられていた.
肺炎症例に対する検査では,喀痰や血液の培養検査による起炎菌の分離が最も確実な診断法であり,さらには分離された菌を用いて薬剤感受性を調べることもできるので抗菌薬の選択に有効な指標が得られることから最も繁用されている.ところが,培養検査はすでに抗菌薬が投与されていると菌の発育が不良になることがあり,しかも肺炎球菌の場合は,自己融解酵素を有しているため死滅しやすいこと,口腔内の常在菌でもあるので喀痰から分離されても必ずしも肺炎の起炎菌とは限らないこと,などから培養検査による肺炎球菌の同定には限界がみられる.さらに培養同定検査は同定まで最低2日間かかるので,迅速な診断ができないという問題がある.一方,尿中抗原は抗菌薬投与後でも検出可能であり,検体として用いる尿が大腸菌などによって汚染されたとしても検査結果が影響されることはない.また,喀痰は肺炎症例であっても必ずしも採取できるものとは限らないし,血液培養では血液は患者の発熱時に十分量を採取しなければならないので,患者の負担が大きくなるという欠点がある.しかし,尿検体は容易に,しかも大量に採取することができ,これを濃縮することで,感度を高めることが可能である.このように,尿中抗原の検出は迅速性,検査の感度,検体採取の容易さといった点から培養検査よりも有用であるとされている.
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