特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
血液生化学検査
血液ガス・電解質・微量金属
血清銅
中牧 剛
1
,
友安 茂
1
1昭和大学医学部血液内科
pp.279-281
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101801
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
1. 異常値の出るメカニズム
銅(Cu)は成人の体内に約100mg存在する.身体組織中,肝臓・脳・骨髄に銅含有量が多い.銅は腸管からの吸収と胆汁中への排泄でバランスが保たれている.経口摂取された銅(2~3mg/日)は小腸上部で吸収され,主としてアルブミンと結合して肝臓に達する.肝細胞で銅輸送蛋白であるセルロプラスミンに合成されて血液中に放出される.セルロプラスミンはCuを6原子含むα糖蛋白で青色を呈し,急性相反応蛋白(acute phase protein:APP)の性格も併せもつ.血清銅の95%はセルロプラスミン結合銅として存在する.残りの5%はアルブミン,アミノ酸と結合している.セルロプラスミンは肝臓から組織への銅の再分布を担う.血清銅は必ずしも体内の貯蔵銅の量を示す指標ではない.
銅の主な排泄は胆汁中であるため,胆道系の閉塞は血清銅の増加をきたす.また,炎症性蛋白として炎症に伴い血清銅は増加する.銅摂取量の減少や種々の原因による低蛋白血症では血清銅は減少する.セルロプラスミンは鉄を酸化し(Fe2+→Fe3+,フェロキシダーゼ作用),トランスフェリンと鉄の結合を促進し,貯蔵鉄動員作用をもつ.そのため,血清銅は鉄代謝と関連して変動する.遺伝性に銅代謝に異常を有する疾患(Wilson病,Menkes病)ではセルロプラスミンへの銅の転送が障害され,血清銅は著減する.無セルロプラスミン血症ではセルロプラスミンとともに血清銅も減少する.
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