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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
血液生化学検査で測定される尿素窒素は,血中に存在する尿素中の窒素量であり,慣用的にBUN(blood urea nitrogen)という用語がよく用いられている.しかし,通常は血清中の尿素窒素(serum urea nitrogen:SUN)を測定している.血清で検体を保存する場合には,室温で1日,氷室保存で数日,凍結保存で6か月は安定である.
尿素は非蛋白性窒素化合物の1つであり,蛋白代謝の終末産物である.つまり,経口的に摂取された蛋白や組織蛋白の最終産物であるアンモニアから尿素は生成される.尿素の合成は肝細胞においてオルニチン-アルギニン-尿素サイクルの経路で行われ,血中に入り尿中に排泄される.尿素は分子量が小さい(60 daltons)ため,糸球体から自由に濾過されるが,その濾過指標としての利用は,尿素の再吸収が水分の再吸収と密接にリンクしているので制約を受ける.したがって,BUN値は利尿状態により変動する.尿素は近位および遠位尿細管のいずれでも再吸収されるが,近位尿細管では利尿状態にかかわらず,濾過量の大部分が再吸収される.しかし,腎髄質集合管における尿素の再吸収は,利尿状態によって左右される.抗利尿ホルモンの欠如(利尿)状態で髄質集合管は尿素に比較的非透過性を示すため,この部位からの尿素の再吸収はわずかである.逆に,抗利尿ホルモンの存在(抗利尿)状態では髄質集合管の尿素透過性が亢進し,尿素の再吸収は増加する.このような尿細管での再吸収のため,正常人の尿素クリアランス(C urea)は糸球体濾過率(GFR)を下まわる.その程度は利尿状態によって変わるため,C urea/GFR比は利尿期の0.65から抗利尿期の0.35まで変化する.
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