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典型的な症例
胸部単純X線写真正面像で,心陰影に重なり左肺下葉に区域性に分布する境界不鮮明,内部不均一な浸潤影とその周囲に斑状影が認められる(矢印).浸潤影は斑状影が融合したものと想像される.この症例は,ブドウ球菌による市中感染性の気管支肺炎であるが,咳嗽,発熱,血液検査から呼吸器感染症が示唆され,これに単純X線写真での病変の分布が区域性であること,小葉大の斑状影とそれらが融合したと考えられる内部不均一な浸潤影から気管支肺炎と診断できるが,このパターンを示す他の起因微生物の鑑別は画像所見のみでは困難である.この症例は,たまたまCTが行われているが,この症例も含め一般に市中肺炎ではCTの胸部単純写真に付加する情報はない.
胸部単純X線写真は,症状や検査所見とともに肺炎の有無の診断に用いられる.肺の感染症の起因微生物は細菌,ウイルス,結核,真菌,リケッチア,クラミジア,原虫などがあり,これらの感染の強さや宿主の免疫状態,治療内容により同じ微生物による感染でも異なった病態をとる.一般にこれらの起因微生物の同定は,症状や検査所見および単純X線写真からは困難で,治療は細菌学的あるいは免疫学的検査による起因微生物の同定に基づいた抗菌薬の選択が最善であるが,実際には困難なことも多く,起因微生物不明のまま経験的に行われること(エンピリック治療)も多い.日本呼吸器学会の肺炎診療のガイドライン(以下,ガイドライン)1)では,肺炎を症状や検査所見および単純X線写真により重症度別に分類し,それぞれの起因微生物をカバーする抗菌薬を選択するとしている.しかし,臨床の場では抗菌薬の有効な選択のために,画像から考えられる起因微生物が求められることもある.
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