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典型的な症例
右上肺野外側に,浸潤影,すりガラス陰影を認める.陰影の内部には高濃度の粒状陰影が散在する(長い矢印).また空洞性変化を疑わせる透亮像(短い矢印)を包含する.肺門に連続する線状陰影を認め(矢頭),気管支壁の肥厚が疑われる.陰影は,通常の肺炎像に比較すると,陰影の強弱が多彩であり,また基本的にコントラストの高い“かたい”陰影である.これらのコントラストの高い陰影は,乾酪壊死物質の腔内貯留という二次結核の基本的病理像に一致する典型的な胸部単純X線写真像である.肺胞腔,肺胞管,細気管支を高吸収の乾酪壊死物質が充満し,周囲肺野とは比較的,境界が鮮明な高濃度の陰影を形成する.拡がりは,肺胞管レベルから小葉レベルまで多彩であり,これらが混在して,病変の陰影の強弱が多彩となる.空洞や気管支壁肥厚も結核を強く疑わせる所見である.
CT(b)では,小葉内で分岐する高コントラストの微細な分岐線状陰影(白矢印),粒状陰影(矢印),空洞性病変,など,多彩な病変を認める.
1997年,日本の結核の新登録患者は42,715人と38年ぶりに上昇に転じ,罹患率も10万対33.9と43年ぶりに上昇を示したことを受けて,厚生労働省が結核の非常事態宣言を出したことは記憶に新しい.その後数年は,これらの値は再び下降傾向にあるが,日本の結核罹患率(2002年)は,いまだに対10万人あたり25.8人であり,これは他の欧米先進国の4.5~10.1人と比べると,明らかに多い数値である.また,塗抹陽性患者の全結核患者における割合は,45.1%ときわめて高い割合を示している事実に対しても,われわれは認識を新たにする必要がある.一方,人口の高齢化,疾病構造の変化による潜在的な免疫不全患者の増加,外国人流入者の増加などの社会的要因が加わり,結核症は日常診療において必ず鑑別診断に含まれる感染症の一つになっている.結核の診断は画像診断でなされるものではなく,患者の自他覚所見やその他の種々の臨床所見を総合して初めて,その疑いが浮上するものである.しかし,結核を主治医が疑うようになる契機として,結核のいくつかの特徴的な画像を知っておくことは重要であり,さらに胸部画像診断の出発点でもある胸部単純X線写真におけるそれらの特徴を知っておくことは有益である.非結核性抗酸菌は,抗酸菌症の全体のなかでの施設別の割合では,結核療養所よりも一般病院で菌が分離される比率が高いことが知られており,一般病院でより問題となりうる抗酸菌症である.結核症例の画像との類似点,相違点を簡単に述べる.
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