特集 臨床医必携 単純X線写真の読み方・使い方
胸部
気胸―見落とし・誤診を減らす撮影法と読影
小野 修一
1
1弘前大学医学部放射線医学講座
pp.88-96
発行日 2004年11月30日
Published Date 2004/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101193
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典型的な症例
症例1:27歳,男性.
初発症状:突然の呼吸困難,背部痛.
立位,吸気位の胸部単純X線写真を提示した(図1).気胸は,左側肺野末梢の空気濃度の陰影としてみられる.同部は,肺野血管影の欠如,透過性の亢進を呈し,やや縮んだ肺の濃度はわずかに高く,気胸との間に臓側胸膜で縁取られた円弧状の境界面を形成している.一般に元々低い空気濃度の肺とより低い空気濃度の気胸であるので,少量の気胸を濃度の差として捉えることは難しいことが多く,この円弧状陰影と肺野血管影の欠如が有力な情報を与える.本症例では,肺野縦隔側にも気胸があり,肺野と境界面を形成,中央陰影の外側にmedial stripe sign(90ページ,「知っておきたいサイン」参照)を形成している.
気胸は,種々の原因により胸膜腔に空気が貯留した状態を指す.全く無症状のものから非常に重篤で予後不良の経過をたどるものまであり,急速に進行するものもあるため,初診時の画像診断,特に単純X線写真の役割は重要である.多量の気胸はまず見落とされることはないが,比較的少量の場合,時に診断が難しく見落とされることがある.本稿は,気胸の診断で,見落とし,誤診を減らすための撮影法と,その画像所見,診断・治療に必要な情報を得るための臨床的事項について概説する.
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