特集 臨床医必携 単純X線写真の読み方・使い方
胸部
胸水―的確に胸部写真から胸水貯留を診断するコツ
小林 健
1
1金沢大学医学部放射線医学教室
pp.80-87
発行日 2004年11月30日
Published Date 2004/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101192
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典型的な症例
正面像で,右下肺野の肋骨横隔膜角(costophrenic angle)の鈍化を認め,外側は上方へ弓状に滑らかに先細りしていく.これは三日月兆候(meniscus appearance)と呼ばれ,典型的な胸水貯留を示す単純X線写真の所見として広く知られている.胸水貯留では肺との境界は明瞭で尾側は均一な濃度となり,本来横隔膜下に透見できる右下葉の血管が全く見ることができない.小葉間裂も平滑に肥厚し三日月兆候と連続している.小葉間裂にも胸水貯留が指摘可能である.右下肺野の透過性が低下している所見は,大葉間裂や背側に貯留した胸水を見ていると考えられる.
胸水貯留はさまざまな原因で胸腔内に液体貯留をきたすものであるが,少量の場合には聴診や打診では発見できず,胸部単純X線写真は胸水の診断にきわめて有用である.また,胸水量の推定,治療などに伴う胸水の変化の観察にも簡便で有力な診断法となる.
しかし,ある程度以上の量の胸水で典型的な画像所見をとる場合には判断に困ることはないと思われるが,非典型的な画像所見をとる場合や少量の胸水を診断する場合,多量の胸水と無気肺の鑑別には注意を要する.本稿では,以上の点を中心に胸水の単純X線写真について述べる.
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