今月の主題 腹部疾患をエコーで診る
臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー
〈消化管〉
胃癌
宮本 幸夫
1
1東京慈恵会医科大学放射線医学
pp.270
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100978
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胃癌ないし大腸癌の超音波像における古典的な所見は,pseudo-kidney signと呼ばれる全周性壁肥厚像で,進行癌に特徴的としてよく知られている(図1).同所見は,消化管の悪性リンパ腫や高度の消化管の炎症においても認められる.胃癌の局所的な壁肥厚像が経腹壁的な超音波検査においてもある程度捉えられることは少なくないが,胃内腔のガス像は一般に胃壁描出の大きな妨げとなるため,飲水法などを併用することで観察部位からガスを排除し,対象を焦点域に捉えようとする試みが広く用いられている(fluid-filled stomach,liquid-filled stomach)(図2).超音波内視鏡を用いて,胃壁の構造を高分解能探触子で直接捉える方法も広く普及してきている.
胃壁が超音波像にて5層構造として捉えられることはよく知られている.各層の解釈に関しては,現在もなお十分なコンセンサスが得られたわけではないが,粘膜層より順に,①粘膜と胃内腔との境界より生ずるエコー,②粘膜(腺窩上皮および粘膜固有層),③粘膜下層,④固有筋層,⑤漿膜および漿膜下層,とするという考え方が最も妥当なものと思われる.なお,より高分解能な探触子を用いれば,胃壁が11層を超える多層構造として描出されることが知られており,それらの多層構造のなかに,胃壁内の各層における境界(interface)より生ずるエコーが数多く含まれていることは,胃癌の壁深達度診断を行ううえでの重要な指標となる.これらの多層構造を前提とした胃壁の超音波診断は,胃癌の内視鏡治療の適応を決めるうえでも重要であり,腫瘍の壁内進展範囲の診断や,治療効果の判定にも有用となる.
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