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胃粘膜下腫瘍の診断には,内視鏡におけるbridging fold signや上部消化管造影profile像における90度程度の粘膜面からの腫瘤の立ち上がり角度(angle sign)がよく知られている.しかしながら,これらの所見は,腫瘤を粘膜側より観察した場合における,いわば間接的な所見であり,粘膜と腫瘤との関係を断層像として捉えたものではないため,おのずと診断精度には限界があった.一方MRIやCTは断層像ではあるが,胃粘膜,粘膜下層,固有筋層などを明瞭に識別するような空間分解能を有していないため,胃粘膜下腫瘍の診断を確実に施行することは不可能であった.こうしたなかで,超音波像における胃壁層構造描出の応用として,bridging layers signが胃粘膜下腫瘍の特徴的所見として考案された(図1).胃壁は超音波像にて5層構造として描出されることはよく知られている.5層構造が粘膜側より順に,①粘膜と胃内腔との境界より生ずるエコー,②粘膜(腺窩上皮および粘膜固有層),③粘膜下層,④固有筋層,⑤漿膜および漿膜下層であるとする解釈が一般的である.腫瘤の粘膜側に3層構造が認められ,そのうち少なくとも粘膜側より第1・第2層が,正常胃壁の第1・第2層から連続している場合をmucosal bridging layersとし,正常胃壁の第5層が腫瘤の漿膜側に連続していることをserosal bridging layerとして,両者をまとめてbridging layers signと呼ぶ.前者は腫瘤が胃の粘膜下に存在することを示す所見であり,後者は腫瘤が胃壁より発生したことを意味する所見であるため,両者が満たされれば,腫瘤が胃粘膜下腫瘍であることを直接的に診断することになる.bridging layers signは飲水法にても,超音波内視鏡にても有用なサインであるが,腫瘍の良・悪性を問うものではない.平滑筋肉腫(図2)は平滑筋腫に比して,変性壊死をきたしやすい傾向にあることなどはよく知られているが,神経鞘腫なども変性壊死をきたしやすいことはよく知られており,明らかな転移や播種などの付随所見を認める場合を別とすれば,良・悪性を鑑別する特異的な超音波所見は筆者の知る限り報告されていない.
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