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肝囊胞(ciliated foregut cyst)は,大きく先天性・後天性の肝囊胞に分類されるが,通常,超音波検査のスクリーニングにおいて遭遇する囊胞は,胆管の先天的な形成異常により発生したものであることがほとんどである.
典型例の超音波所見は,境界明瞭な類円形の占拠性病変として描出され,内部エコーが無エコー(echo free),後部エコーの増強(posterior echo enhancement:PEE),外側側方陰影(lateral shadow:LS)である(図1).比較的頻度も高く超音波検診でも頻繁に指摘されるが,良性疾患でもあり,通常超音波検査で単純囊胞と診断した場合,無治療でよいため,特に精査を行うことはない.治療の適応が生じるのは大きな肝囊胞で他臓器圧排所見などを有する場合で,超音波ガイド下での囊胞穿刺を行い,エタノールや抗生物質を注入し治療することが多い.小さなものでは脈管系疾患との鑑別がつきにくいこともあるが,断層面を変え脈管や胆管との連続性を確認することや,カラードプラや造影超音波検査で内部に血流信号を認めないことより鑑別を行う.鑑別疾患で最も重要となるのは囊胞腺癌,囊胞腺腫であり,囊胞が増大傾向を認める場合や,隔壁の存在,壁の肥厚囊胞内部への隆起性病変の存在などの所見がみられる場合には精密検査を行う.肝囊胞の内容液は通常透明な分泌物であり内部エコーは無エコーであるが,囊胞内出血や感染を起こした症例では内部エコーが出現するため,症例によっては精密検査の対象になる.特にこのような症例では呼吸移動や体位変換により内容物が可動するか否かが腫瘍性病変との鑑別に役立つので積極的に行う.図2に大型の肝囊胞の症例を呈示する.本症例は内部が出血によるフィブリン塊により乳頭状の隆起性病変を認めている.
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