院内感染コントロールABC(5)
院内の抗菌薬使用と耐性菌
古川 恵一
1
1聖路加国際病院内科感染症科
pp.902-908
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100821
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
広域スペクトラムの抗菌薬(カルバペネム,第3・第4世代セファロスポリンなど)を数日以上長期に使うほど,人の常在菌は減少し,薬剤耐性菌の出現と増加がもたらされる.そして菌交代現象と薬剤耐性菌による二次感染が起こるリスクが高くなる.また入院中の多くの人に広域スペクトラム抗菌薬を使うほど,院内で薬剤耐性菌の増加がもたらされる.例えば近年,第3世代セファロスポリンが多用された結果,MRSAや広域βラクタマーゼ(ESBL)産生性の多剤耐性クレブシエラなどの増加がもたらされ,カルバペネムの多用に伴ってカルバペネムおよびセファロスポリンにも耐性の緑膿菌やアシネトバクターなど多剤耐性菌の増加がもたらされている.本邦の病院のなかにはカルバペネム耐性緑膿菌の分離率が緑膿菌全体の60%以上という市中病院があり,すべての抗菌薬に耐性の緑膿菌の分離率が9%という深刻な事態の大学病院もある.多剤耐性菌が患者に感染を起こせば治療薬は限られたものしかなく(あるいは全く存在せず),患者の予後は当然悪くなる.
そこで,このような薬剤耐性菌をできる限り作らないような抗菌薬の使い方をするように,努力する必要がある.特定の医師や特定の科だけではなく,病院全体として薬剤耐性菌をできる限り作らないように方策をたてる必要がある.そのためにはどのような方策があるか,次に説明する.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.