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糖尿病足病変の発生に関する誘因として,履物による障害と熱傷が主要因であることは,10年前と現在でも同様な傾向である.また長い“足の文化”を有する欧米での足病変の誘因としても,履物による足の障害が主とされている.履物として靴が最も多く使用され,それ以外にサンダル,雪駄,げた,長靴,地下足袋,安全靴,スキー靴と多種存在し,いずれもが足病変の原因となる.足と履物との適合性が不一致な点で足の障害が起こることは当然である.窮屈な履物は当然としても,履物が大きくて靴内で足が過剰に移動する場合も足の障害が起こるため,靴選びは重要である.靴と足の適合でのポイントは,爪先の形状と踵である.爪先は立位や歩行時に屈曲するため十分な高さが必要である.糖尿病患者は神経障害で足趾が屈曲する現象(称して「ハンマートウ」や「クロートウ」)を呈することが多く,爪先に高さが適切であるかが靴擦れ予防に重要である.靴と爪先との距離は通称「捨て寸」と呼ばれ,15~25mm必要である.履物の中での足の固定に,足の甲での押さえが重要である.オックスフォード型の外羽根式が最も好ましい.ヒモやマジックテープでの固定は十分に行う必要がある.男性に比し女性ではパンプスの使用が多いため,爪先と靴との圧着が多く,より注意が必要である.踵は靴との摩擦が鋭角的に行われ,かつ上下動での強い摩擦が起こるため,足の障害面積が多く,感染症を併発しやすい.踵の履物による障害を受けた例では,たとえ素足になっても室内での歩行で安静がとれず,炎症の拡大が止まらないことが多い.足の変形が高度な糖尿病神経障害例では,履物の選択が重要である.素足での歩行は危険のため,靴下を使用し足の保護に努めることが重要である.市販の履物が不適な場合,専門のフットケア外来や日本靴医学会への相談が必要である.
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