特集 文化と健康生態・2
日常生活の健康生態・5 余暇の健康生態
小林 章雄
1
,
坪井 宏仁
1
1愛知医科大学医学部衛生学教室
pp.738-742
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902829
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余暇の概念と時代的背景
歴史的に余暇に関する記載を眺めると,古くは紀元前3世紀のアリストテレスのものがある.「幸福は余暇に左右されると一般に信じられている.われわれは,平和に暮らすという理由で戦争を起こすように,余暇を取るために余念がない」と述べている.彼の述べた余暇とは,何らかの活動によって埋められることを待つ空虚なものではなく,自ら選択できる活動で,高貴で徳のある考えを凝視する時間であり,幸せと喜びのための道であった.したがって,余暇は仕事より望ましいもので,余暇の中においてのみ文化の理想が実現されると見なしていた1).ここには,現代の余暇の概念に通じるところがある.
『広辞苑』によれば,余暇は「自分の自由に使える余った時間,ひま,レジャー」である.ここにアリストテレスのような積極的意味は見出せないが,余暇の概念は一般に「労働」もしくは「何らかの義務」との対比で使用されてきた.かつては「余暇」を怠惰としての「暇」や「遊び」と結びつけ否定的な意味にとらえた時代もあるが,図1に見るように「物の豊かさ」よりも「心の豊かさ」を重視する人の割合が増加している事実は,「余暇」を自分のために活用する有用な時間と見なし,肯定的な意味合いが強くなっていることが示唆される.
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