連載 海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・12
公衆衛生とチャリティーとの関係
ホスラー 晃子
1,2
Akiko S. Hosler
1,2
1ニューヨーク州保健省慢性病疫学課
2ニューヨーク州立大学公衆衛生大学院
pp.908-909
発行日 2000年12月15日
Published Date 2000/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902423
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アメリカの新聞の死亡記事は,著名人,一般市民の別なく,故人の顔写真から,経歴,家族構成,趣味に至るまでが細かく載せられた,なかなか読みごたえのある記事で,毎日目を通す読者も多い.そんな死亡記事の締めくくりに,「葬儀の参列者は,献花のかわりに全米○○協会へ故人名で寄付をしていただくことを希望します」といった一文がついていることがよくある.名指しされているのは,故人が生前にボランティアや役員をしたり,またその顧客としてサービスを受けたことがあるような,ゆかりのある非営利の慈善団体(チャリティー)である.アメリカでは,たいがいの人は自分が「ひいき」にするチャリティーを一つ二つ持っており,お葬式に限らず,事あるたびに寄付することを惜しまない.自分の好きなチャリティーに,給料の一部を天引きする形で寄付する制度は,多くの企業や官庁でも採用されているし,ファンドレイザー(資金集め)と呼ばれるパーティー,コンサート,「歩く会」,「走る会」といった催し物は,ほとんど毎日どこかで開かれているので,それに参加することもできる.アメリカには登録されているだけでも数千ものチャリティーが存在し,それらはみな,基本的には一般市民からの寄付に支えられて存続しているのである.そんな数あるチャリティーの中でも,特に歴史があり,知名度,社会への貢献度が高いとされるのは,やはり特定の疾病の予防,治癒,患者サポートなどを目的とする,健康関連の全国団体であろう.
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