連載 海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・1
公衆衛生というキャリア
ホスラー 晃子
1,2
Akiko S. Hosler
1,2
1ニューヨーク州保健省慢性病疫学課
2ニューヨーク州立大学公衆衛生大学院
pp.56-57
発行日 2000年1月15日
Published Date 2000/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902227
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昨年6月に新しいニューヨーク州保健省の長官が就任した.ブッシュ政権下で公衆衛生局長官(Surgeon General)としてアメリカ公衆衛生行政の最高職を務めた,アントニア・ノベロ女史である.ノベロ長官は歴代の公衆衛生局長官中,女性で初めての,しかも初めてのヒスパニック系であったことが記憶に新しい.ノベロ長官はプエルトリコに生まれ,当地の公立医科大学を卒業後,ミシガンで小児科医として研修を受け,病院の勤務医を経て国立保健局(National Institute of Health;NIH)に就職11年にわたるNIHでの活躍を認められて,公衆衛生局長官に任命された.彼女のように臨床の医師として実務を経験した後,連邦政府や州政府に採用されて公衆衛生の方面にキャリア転換をする人は,今では減少傾向にあるといえる.同じ医師でも医科大学で予防医学,コミュニティ医学といった分野を専攻し,病院での臨床研修期間を短縮して公衆衛生の大学院で修士号を取り,まっすぐに公衆衛生のキャリアに進む人が今は多数派であろう.これはここ20年ぐらいの間に,公衆衛生が医学の分派ではなく,独立した分野としてのアイデンティティを確立したことと,複雑化,多様化する公衆衛生の需要に対応するには,臨床の医学知識だけでなく公衆衛生の専門教育がさらに必要であると認識されたことにあると思う.
公衆衛生はその性質上,非常に学際的な分野であるといえる.
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