特集 地研における公衆衛生情報ネットワーク
病原体サーベイランス—地研との情報ネットワーク
山下 和予
1
,
井上 榮
1
1国立感染症研究所感染症情報センター
pp.410-413
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902311
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地域・国の感染症対策には感染症サーベイランスが不可欠である.Surveillanceとは,語源は「sur(上)+veil(見る)」から来ており,感染症の発生を広い地域にわたって,かつ恒常的に監視することである.サーベイランスは患者発生だけでなく,同時にその病原体の動向をも監視する必要がある.感染症対策は病原体によって異なるからである.
患者発生と病原体検出との2種類の情報は,最終的には統合して対策に役立てるのであるが,それぞれの性質はかなり違っている.前者は臨床医から発せられるものであり,量的な統計データとして不可欠であり,現在の情報技術を使えば,広域かつ限りなくリアルタイムでの監視が可能である.一方,病原微生物は肉眼では見えないものであり,その検出には検査室が必要であり,分離培養,同定を行うための時間が必要であり,病原体検出情報が患者発生情報より遅れて発信されるのはやむを得ないことである.しかも病原体検出には人材・費用がかかることから,すべての感染症患者からの病原体検出は不可能である.すなわち,病原体サーベイランスは,患者発生状況を見ながら,最も効率的な検体採取を考えなくてはならない.つまり,病原体検出データは量ではなく質が重要である.わが国では地方衛生研究所(以下,地研)が地域の病原体サーベイランスを行っている.
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