特集 地研における公衆衛生情報ネットワーク
化学物質のデータベース構築—地研との交流
山本 都
1
1国立医薬品食品衛生研究所化学物質情報部
pp.405-409
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902310
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国立医薬品食品衛生研究所(以下,国立衛研)は,医薬品,食品,化学物質に関する分析や毒性試験を中心とした業務を行っている.国立試験研究機関はそれぞれの業務内容の違いから,日常かかわる行政上の担当部署や関連の研究会などが異なっており,国立感染症研究所や国立公衆衛生院に比べると国立衛研は「公衆衛生」や「保健」などの名称がついた分野とのなじみが薄い面がある.地方衛生研究所(以下,地研)の分析や毒性試験関連部門とは,毎年開かれる全国衛生化学技術協議会他の関連学会,あるいは共同研究を通じたかかわりも多いが,例えば地研のその他の部門や各地の保健所との直接のつながりは現時点ではあまり多くはない.
しかし,1990年代半ばから,サリン事件,阪神大震災,重油流出事故,O 157食中毒事件,和歌山ヒ素カレー事件などが相次ぎ,「健康危機管理」や「情報ネットワーク」の重要性がクローズアップされてきた.国立衛研化学物質情報部においても,従来から行っている化学物質の安全性情報の調査や研究などの業務の中に,ケミカルハザード分野での健康危機管理や情報ネットワークのファクターが大きくかかわってきている.健康危機管理の分野においては,従来縦割りで行ってきた業務や機関の枠を越えた横断的な連携が必須である.人の健康を守る,あるいは健康被害を防止する,といった立場から国立衛研と地研の連携をこれまでかかわりのあった部門だけに限らずより広い範囲で今後強めていく必要がある.
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