特集 感染症に関するサーベイランス
病原体サーベイランスの現状と今後の方向性
高橋 琢理
1
1国立感染症研究所感染症疫学センター第二室
pp.22-27
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208809
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病原体サーベイランスの重要性
近年,病原体サーベイランスの重要性が高まってきている.海外においては鳥インフルエンザや中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS)などの新興・再興感染症が発生している.これらの感染症の動向を把握し,リスク評価と対策を行うためには,しっかりとした病原体サーベイランスが重要である.さらに,ある感染症がより拡がりやすくなる,あるいは,感染症にかかった患者がより重症になるなどの特性変化を把握するには,細菌・ウイルスに対する解析と評価が欠かせない.病原体サーベイランスで収集された情報はリスク評価などで活用され,感染拡大防止などの対策立案に用いられる.さらには,感染症の治療方法やワクチンなどの開発などにおいても,病原体サーベイランスによって収集される情報は重要な役割を担っている.
近年,感染症対策においては薬剤耐性が課題となっている.耐性を持った病原体による感染症は,抗菌薬などが十分に機能せず,治療が困難となる可能性がある.そのため,耐性菌の出現を把握し,拡散させないことが重要である.薬剤耐性を持った病原体による感染症の発生について把握する方法として,病原体サーベイランスによって各医療機関院内の患者の保菌状況や,院内の流し,トイレなどの環境中の病原体検出状況を監視することが挙げられる.その結果から,病原体の広がりを把握し,伝播の原因を見つけ出し,対策に結び付ける.
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