連載 あなたにもできる調査研究—事例をもとに・1【新連載】
現場における調査研究の意義
多田羅 浩三
1
1大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学F2
pp.272-278
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902280
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
平均寿命世界一の社会は,最も多様な健康状態の人たちの生活を包摂している社会である.公衆衛生の実践は日々の生活の中にある人々の多様な健康状態を基盤とし,対象としてすすめられる.そのような人々の現実の生活,現場から出発するという伝統の中で公衆衛生は育ち,発展してきた.人々の現実の生活,現場に学ぶことが公衆衛生のすべてであるといっても過言ではない.その「学ぶ」という作業が,「調査研究」と呼ばれているのではないだろうか.そうであるとすれば公衆衛生の実践はまさに,現場における「調査研究」によって支えられているといえよう.
わが国では昭和26年には新しい結核予防法が施行され,この年には昭和10年以来,わが国の死因の第1位を続けてきた結核が第2位となり,脳血管疾患が第1位となった。以降,結核による死亡率は減少を続け,脳血管疾患は昭和55年まで1位であったが,人々の生活スタイルの改善,あるいは降圧剤の普及などがあってようやく昭和56年に2位となり,がんが1位となった.一方,乳児死亡率は,昭和22年には76.7(出生千対)であったが,昭和55年にはほぼ10分の1の7.5となり,世界のトップグループに入った.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.