視点
がん検診の意義について考える
多田羅 浩三
1,2
1厚生省医療保険福祉審議会老人保健福祉部
2大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.394-395
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901895
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がん検診の意義—医療保険制度と健康診査事業は車の両輪
わが国は,昭和36年に国民健康保険体制が達成されて以来,すべての国民はなんらかの保険制度によってカバーされている.このような医療保険制度の高い普及率が,わが国が世界一の平均寿命を達成している最も大きな要因となっていることは明らかである.この医療保険制度は便利な制度ではあるけれども,なんらかの症状があって医療機関を訪れるというところからすべての対応が始まるという,特性を有している.医療機関を訪れ,医師から初めて疾病の存在を指摘されたとき,こんなことならなぜもう少し早く診察を受けなかったのかと,思う人は決して少なくないはずである.
この点の認識に立って,わが国の国民健康保険制度では,戦後の早い時期から,「予防にまさる治療はない」とのキャッチフレーズのもとに,保健施設活動という仕組みのなかで保健婦を設置したり,住民の健康診査を行って,住民の疾病の早期発見の機会をつくるための事業を実施してきた.それらの地域保健活動の貴重な実績をもとに,昭和57年の老人保健法のなかに保健事業の実施が規定されることになったのである.
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