特集 飲酒の行動医学
飲酒行動と遺伝子
原田 勝二
1
1筑波大学社会医学系法医学
pp.234-237
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902056
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飲酒関連問題は単に身体的疾患のみならず社会生活を営むうえで支障となる行動を含んでいるが,その中核となっているのはアルコール依存症である.この疾患はアルコールが原因で生じるため,適正飲酒を守っている限り発症しない.いうまでもなく,他の生活習慣病と同様,アルコール依存症の発症,進展にはライフスタイルや心理的,社会的因子が関与している.しかしながら家族研究や双生児,養子の研究からは遺伝的素因が深く関与する疾患であることも判明している1,2).このため,遺伝的研究は依存形成に関与する遺伝子の解明に向け精力的に行われてきた.仮に依存形成の原因遺伝子の存在を想定した場合,この遺伝子を特定するための戦略として,次の二つの方法が一般に行われている.すなわち,原因遺伝子の染色体上の位置を決定するために,数多くの家族試料を用い,各染色体上の多型性DNAマーカーによる遺伝的連鎖解析(genetic linkage study)を行う.さらにポジショナルクローニングにより原因遺伝子の特定が行われる.この方法では,仮に染色体上の位置が特定されても,未知の原因遺伝子の特定には莫大な労力と時間を要する.米国では,COGA(Collaboration Study on Genetics of Alcoholism)プロジェクトが進みつつあるが,その主な目的は連鎖研究による原因遺伝子の染色体上の位置の探索にある.
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