特集 飲酒の行動医学
エタノールの脳への影響—新しい知見を中心に
石原 熊寿
1
,
笹 征史
1
1広島大学医学部薬理学教室
pp.238-240
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902057
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
エタノールはその作用として適量では抗不安作用や鎮静作用を有し,精神状態の改善に寄与することが古くから知られている.しかし,大量の飲酒や長期にわたる連続的な飲酒は脳をはじめとする様々な臓器に悪影響を及ぼす.このエタノールの脳内における作用点の一つとして中枢神経系の抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:GABA)の受容体があり,GABAの作用を増強することはよく知られている.一方でエタノールの作用点は蛋白質直接ではなく細胞膜の脂質にあり,膜の流動性を変化させることによって作用を起こすとも考えられている.しかしながら,細胞膜の脂質に対する作用は結果として神経伝達物質受容体やイオンチャネルなどの膜蛋白の機能に影響を及ぼすことになる.これらの観点から,急性および慢性のエタノールの脳への影響としてエタノールによる受容体およびイオンチャネル機能の変化,ならびにエタノールによる神経細胞全体あるいは脳全体の機能変化について概説する.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.