特集 公衆衛生の経済学
公衆衛生の経済学ABC
小林 廉毅
1
1東京大学大学院医学系研究科保健経済学
pp.34-37
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902016
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公衆衛生は人間集団や社会の組織的な取り組みによって,人々の健康を維持・増進する活動(実践),ならびにそのための技術・知識(学問)の総体とされる.一方,経済学は人間社会における財(モノ)やサービスの交換の効率性と公平性について考える学問である.人々の生活や福祉に貢献することは学問共通の目的であるとしても,公衆衛生と経済学はともに直接の対象が人間社会であること,人間集団の行動観察が基本になること,社会への実践的役割が強調されることなど共通点が多く,両者の親和性はかなり高いと思われる.しかしわが国における両者の学際的発展の歴史はまだ浅く,用語の混乱すら見られる場合も少なくない.本稿ではまずHealth Economics(注:わが国では訳語として「保健経済学」や「医療経済学」が使われているが,両者に本質的な違いはない.理論的には予防,治療,リハビリ,介護などの活動を区別する理由はないと考えられる)の概念や考え方のうち,公衆衛生活動に重要と思われるものを紹介し,わが国の状況における意義づけや適用可能な方法論について述べてみたい.
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