視点
21世紀に向けての地域保健
高鳥毛 敏雄
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.2-3
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902009
- 有料閲覧
- 文献概要
わが国の21世紀の地域保健について,高知県の農山村での保健調査活動,大阪府の保健所での活動,阪神・淡路大震災下の保健活動の調査,堺市における腸管出血性大腸菌O157の保健活動,わが国の主要都市の結核対策に関する調査など,これまでの地域保健の実践活動を行ってきた中で感じてきた検討課題について述べてみたい.
結論的には都市固有の保健活動の構築が大きな課題であるということである.今日の地域保健の原点は長与専斎が欧米諸国を視察した政府機関の中に国民の健康保護を担当する特殊な行政組織があることを発見し,帰国後に「衛生は自治の元素」であり,「衛生事務は自治実体事務である」という考えのもとに,公布された医制の中で全国の衛生事務の施政と組織を定めたことにあると言われている.この長与専斎が描いた地方の衛生行政組織を基盤とする公衆衛生体制は120余年の年月を経た平成6年の地域保健法の成立によって定住人口が多い地域における地域保健制度は完成したといってよいのではないかと思われる.しかし,今日の都市的な社会については考えが及んではいなかったであろうと思われる.いわゆる都市固有の地域保健体制は曖昧なまま今日に至っているように思われる.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.