特集 水銀汚染—水俣病よりグローバルな環境問題へ
水俣病の疫学
二塚 信
1
,
北野 隆雄
1
,
若宮 純司
2
,
金城 芳秀
3
1熊本大学医学部公衆衛生学教室
2国立水俣病研究センター
3国立がんセンター研究所
pp.303-306
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901253
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はじめに
水俣病は魚介類に蓄積されたメチル水銀を経口摂取することによって起こる神経疾患である.このメチル水銀はアセチレンよりアセトアルデヒドを生産する際に用いられた無機水銀触媒が,メチル水銀に副生され,工場廃水を通じて水俣湾に排出し,食物連鎖を通じて生物濃縮により魚介類に畜積されたものである.チッソ水俣工場のアセトアルデヒド生産は1932年に始まり,1955年から67年にピークに達し,1968年に稼動を停止している1).1987年の本誌で報告したように,ほぼこれと軌を一にしてヒト頭髪や臍帯中メチル水銀は著減をみている2).他方,水俣湾内の魚介類は,ごく少数の魚種ではあるが,食品衛生法による暫定的基準値(総水銀0.4ppm,メチル水銀0.3ppm)を超えており,同湾内の魚穫自主規制は今なお継続中である.
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