特集 公衆衛生活動の国際的な展開
世界の結核問題と日本の公衆衛生
石川 信克
1
1結核予防会結核研究所国際協力部
pp.536-539
発行日 1994年8月15日
Published Date 1994/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901085
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◆世界的に増加している結核問題
結核は忘れかけられた病気であるが,実は世界的にみても未だ17億人(地球人口の約3分の1)の感染者,年間800万人の新患者や300万人の死亡者がおり,単一病原体による最大の疾患である1).5歳以上の感染症死亡でみると結核死亡の大きさが浮き彫りにされる(表1).この傾向は過去数十年変わっておらず,今後は数でも率でも増加の予測さえなされている(表2).数的には,新患者の95%,死亡者の99%は開発途上国で起こっているが,工業先進諸国でも減少の鈍化から増加の傾向さえうかがえる国が出てきており,世界のどの地域でも公衆衛生上の問題といえよう.
その原因としては,結核の慢性疾患としての生物学的な特色に加え,様々な社会・経済的な要因が存在している.すなわち,世界的な富の不平等や経済的停滞による人間の基本的必要(BHN)への対応不足,不十分な保健基盤,不十分な結核対策,新たなエイズの流行などが影響している.また過去数十年間,世界的に結核対策の重要性が無視されてきたことも事実で,このことが各国の結核対策への関心低下,国際支援・協力の不足を生み出してきたといえよう.
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