特集 「健康格差社会」とセーフティネット
公衆衛生の及びにくい人々の結核対策―都市結核研究班からの発信
石川 信克
1
1結核予防会結核研究所
pp.96-100
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100234
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結核はしぶとく社会の中で生き残る感染症であり,結核の発生がかなり減ったいかなる先進国でも,制圧に至っていない.その要因は,慢性感染症であり,社会病であるという結核の特性による.すなわち,①空気感染をするために感染性患者が1人でも発症すれば,周囲に感染を起こす,②一度結核菌に感染すると一生発病のリスクがある,③発症しても症状は緩慢に進行することが多く,診断が遅れる可能性があり,治療も6か月以上を要するためその管理が必要で,不規則・不完全な治療は薬剤耐性を起こしやすい,④上記に対し,効果的な結核対策を継続的に実施すれば,その地域全体から結核を減らすことができ,次第に医学的・社会的リスクグループに偏在するようになる.
特に一般保健サービスが及びにくい社会的弱者や特定集団の中では,流行が存続しやすい.それらに対する特異的対策が不十分であると,そこが火種となって社会全体に波及する.これらは,1980年代の米国で見られたように,罹患率が10(十万対)以下になった多くの低まん延国で結核の再興が起こっている要因であり,いかなる国も対策を相当期間継続し続けねばならないことが,世界的に経験されてきた.
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