保健活動—心に残るこの1例
精神分裂病のKさんとのかかわりの中から
藤原 美代
1
1福岡県遠賀保健所
pp.72
発行日 1994年1月15日
Published Date 1994/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900964
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精神分裂病のKさんは,35歳の女性で,23歳の時に発病し,短期間(3〜6カ月)の入院を6回繰り返している.30歳時の6カ月間の入院を最後に現在まで,外来治療で何とか家庭生活を送っている.星占いや少女マンガが大好きで,少女時代の気持ちをそのまま持っている感じがする.症状としては幻覚,妄想,思考伝播,興奮,拒絶,感情鈍麻などがあり,とても感情の起伏が激しい患者さんである.
前任者から引き次ぎ,初めてKさん宅を訪問した時のこと.Kさんは自分の部屋に閉じこもり出てこない.ボリュームを一杯に上げた音楽,激しくドアを開閉する音が聞こえていた.そのうち急にドタバタと大きな足音をたて,私とKさんの父親が話をしている部屋に入ってきた.鋭い目つきで私をにらみつけ,「どうして保健所は私につきまとうのか,人を狂犬病と一緒にして,おせっかいは迷惑だ,おまえはどうして平和な生活を乱しに来るのか」と興奮し,激しい口調で訴えてきた.私は,担当が変わったので挨拶に来たことを伝えたが,より一層興奮し叫びながら家の中を歩き回り,落ちつかない様子だった.
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