調査報告
軽度肝機能異常者の生活習慣の特徴
石井 英子
1
,
鈴木 貞夫
2
,
佐々木 隆一郎
3
,
市川 啓一
4
,
中島 芳子
4
,
原田 憲子
4
,
八木 俊光
4
,
太田 之夫
4
Hideko ISHII
1
,
Sadao SUZUKI
2
,
Ryuichiro SASAKI
3
1名古屋市教育委員会教職員課
2名古屋大学医学部予防医学講座
3愛知医科大学公衆衛生学講座
4名古屋市教育委員会
pp.870-874
発行日 1992年12月15日
Published Date 1992/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900707
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●はじめに
戦後にみられる日本人の生活習慣の急変は疾病構造の変化を導き,悪性新生物,虚血性心疾患,脳血管疾患などの慢性非炎症性疾患による死亡が死因の主座を占めるに至っている1).こうした疾病構造の変化の中で,慢性肝臓疾患の増加は著しく,来世紀における問題の大きさが憂慮されているところである2).
慢性肝臓疾患の発生要因は,肝炎ウイルスなどの感染性要因と肝毒性物質の慢性暴露に大別される.前者に対する対策は,国レベルで系統的に行われており,近い将来ほぼ確立されるといっても過言ではない.後者の要因の中で大きな比重を占めるアルコール摂取の状況は,楽観できるものではない3).アルコールの持続的大量摂取者の増加は,神経・精神系の障害とともに,肝臓の急性・慢性障害を伴う病人の増加が危惧されるからである.
一方,平成元年に行われた労働安全衛生法施行規則の改正では,雇用者に35歳および40歳以上の全従業員の肝機能を定期的にチェックすることが義務づけられた4).この改正によって,これまで地域住民を対象として行われてきたスクリーニング事業とあいまって,自覚障害に乏しい軽度の肝機能障害を医療機関以外で発見する機会が飛躍的に増大することとなった.
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