保健婦活動—こころに残るこの1例
家族に問題をもつ精神発達遅滞児M君
土井 千穂
1
1熊本県宇土保健所
pp.571
発行日 1991年8月15日
Published Date 1991/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900406
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宇土保健所では,昭和61年4月から幼児の育て方の学習の場として,「すこやか幼児サークル」(親子遊び教室)を実施しています.M君は,このサークルに参加した1人でした.母親から,「3歳なのに1人で何も出来ないし,言葉も遅い」という訴えがありました.名前を聞いても見覚えがなく,なぜ今まで把握できていなかったのか疑問に思っていた頃,他県のH保健所からケース連絡が来ました.M君は精神発達遅滞があり,家族の機能がないケースとして事例検討にあがっていた幼児でした.私は,ケース連絡票に目をはしらせ母親の名前を見た時思わず「あっ」と声が出ました.M君とは,3年前に出会っていたのでした.当時M君は,妹の出生で母の実家であるこの土地に帰ってきていました.「M君が伝い歩きをしない」と母親から相談があり,訪問したのでした.1週間後,「伝い歩きするようになりました」という母親と,M君には明るい笑顔がみられました.
しかし,サークルに参加したM君と母親は,あの頃のイメージとは全くかけ離れた人として,私の目の前に現れました.M君は,保健所の玄関に入る前から,ワァーと泣き叫び手足をバタつかせ,なだめてもどうにもならないのです.
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