連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史・10
入浴と清潔をめぐる近代史・1—「風呂好きな日本人」と汚れた浴場
川端 美季
1
1立命館大学衣笠総合研究機構生存学研究所
pp.338-341
発行日 2024年3月15日
Published Date 2024/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210264
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はじめに
「ヒトとモノからみる公衆衛生史」のリレー連載は、ここまでマスク、サーベイランス史、歯科衛生など多角的なアプローチで、公衆衛生の多様で奥深い歴史が紹介されてきた。
今回から3回にわたり、現代までの入浴と銭湯(公衆浴場)の日本の歴史を中心に振り返る。現代の私たちにとって毎日入浴することは当たり前になっている。毎日入浴しないと言葉では説明できない気持ちの悪さや汚れている感じを覚える人も多いだろう。戦後まで都市部で入浴する場の多くは銭湯であった。こうした銭湯は現代では保健衛生や癒やしのための施設であり、また、多くの人の目には昔ながらの日本文化として映っているのではないだろうか。銭湯の歴史と入浴しないとすまない、清潔にしなければならないといった意識の歴史は結び付いている。入浴と銭湯の歴史を追いながら、私たちの感覚に深く根付いている清潔規範の変遷をひもといていきたい。
初回は、前近代からの銭湯の歴史と、日本人が風呂を好むということがいつごろからいわれるようになったのか、その歴史の一部を読者の皆さんと共に追っていくこととしたい。
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