連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史・7
子どもと歯科衛生の近代・1—昭和初期における学校歯科医の取り組み
宝月 理恵
1
1お茶の水女子大学基幹研究院・文教育学部人間社会科学科
pp.1266-1269
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210203
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はじめに
今号からは歯科衛生(口腔衛生)を事例として、昭和初期における公衆衛生の歴史の一端を紹介していきたい。ここで主題とするのは、子ども、特に児童にとっての歯科、とりわけ学校歯科である。学校歯科の歴史には、専門家、一般の人々(子どもとその家族)、モノ(歯ブラシや歯磨き粉)、環境を含めた公衆衛生の成り立ち、あるいは限界までもが明瞭に表れており、本連載のトピックとして興味深い事例となるのではないだろうか。
人間は生まれたときには歯はないが、乳歯が生え始める頃から生えそろう頃にかけて、自治体の「乳幼児健康診査」や「就学時(就学前)健康診断」で歯の健康診断を受ける機会がある。これが、乳幼児が歯科医と接する最初の機会である場合も多いだろう。そして小学校に上がると学校歯科検診を毎年受診することになる。学校歯科検診は「学校保健安全法(旧学校保健法)」で規定されている児童生徒の健康診断であり、これを担うのが学校歯科医である。今号ではこの学校歯科医の成り立ちとその実例を紹介したい。
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