連載 All about 日本のワクチン・12
ヒブ(Hib)ワクチン
菅 秀
1
1独立行政法人国立病院機構三重病院小児科
pp.1262-1265
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210202
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1.当該疾患の発生動向
インフルエンザ菌Haemophilus influenzaeはインフルエンザ様疾患の患者喀痰から分離されたグラム陰性桿菌である。インフルエンザ菌には、莢膜を有する型と莢膜を有さない型(non typable H. influenzae: NTHi)がある。莢膜は最も重要な病原因子の一つであり、その主要成分の多糖体はa〜fの6種類の血清型に分類される。インフルエンザ菌は、時に粘膜バリアーを超えて血液内に侵入し、血液、髄液などの通常は無菌である部位より菌が検出される髄膜炎、菌血症、敗血症、血液培養陽性肺炎、関節炎などの深部感染症を引き起こすことがあり、これらは侵襲性インフルエンザ菌感染症(invasive H. influenzae disease: IHD)と呼ばれている。とりわけ莢膜型b型(H. influenzae type b: Hib)はIHDの80%以上の起炎菌であり1)、ワクチン導入前には、世界的に見て乳幼児細菌性髄膜炎の起炎菌の中で最も頻度の高い細菌であった。わが国の疫学調査によると、2008〜2010年の5歳未満小児人口10万人当たりのIHD罹患率は11.4〜12.5であり、致命率は1.1%で5.3%に後遺症を認めたと報告されている2)。莢膜多糖体抗原は、T細胞非依存性抗原であるため、免疫系の未熟な小児では免疫応答が引き起こされにくいことが、重症化の一因であると考えられている。したがってワクチンにより免疫を獲得して感染を予防することが重要である。
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