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はじめに
わが国では,かつて人類が経験したことがない超少子高齢・人口減少社会が進行中であり,現在の小学生の半数は100歳以上生きるという推定さえある1).そのような未来に向けて,「健康日本21(第二次)」2)では第一の目標として「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を掲げている.最近の研究では,口腔の健康は全身の健康に関与していることが多数報告されている3)〜5).2011年には「歯科口腔保健の推進に関係する法律」6)も施行され,口腔の健康づくり対策が重要視されてきた.
生涯にわたる健康づくりにおいて,保護者などによって管理される「他律的健康づくり」から,自らの意志や行動による「自律的健康づくり」へと移行していく大切な転換期に当たるのが学齢期である.したがって,学校における口腔の健康づくりを含む健康教育が一生の健康づくりを決定するといっても過言ではない.
近年の社会環境の変化に伴い,子どもの日常生活習慣にも変化がみられる.学校歯科保健には,従来の歯や歯科疾患に対する局所的対応ではなく,子どもの健康そのものを広く考え,生活習慣や家庭環境あるいは保健教育などに対する積極的な支援が要求されるようになってきた.その流れにおいて,2015年に日本学校歯科医会の「学校歯科医の活動指針」7)が改訂された.学校歯科保健の目標は,子どもが自律的に口腔の健康を考え,その意義を理解し,卒業後も自己管理と定期的な専門的管理を自発的に行える児童生徒を育成することであるといえる.また,口腔の健全な発育は,う蝕,歯周疾患,歯列不正・咬合異常など疾病・異常があると障害されるため,学校における歯科健康診断(以下,学校健診)は,これら疾病・異常の早期発見を主な目的としている.
公衆衛生の分野においても,口腔の健康は「健康日本21(第二次)」2)に加え,「健やか親子21」でも取り上げられている重要な課題の一つである.本稿では公衆衛生関係者の知っておくべき「歯および口腔の健康」について概説する.
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