連載 Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年
第二編
石川 信克
1,2
1公益財団法人結核予防会
2公益財団法人結核予防会結核研究所
pp.833-836
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210117
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大学紛争の中でもまれる
1967年、年が明け卒業を控えて、インターン闘争が始まった。当時、医学部を卒業し国家試験を受けるためには、1年間のインターン研修を受ける制度あったが、研修というよりほぼ無給の労働で、学生や研修医の間に不満が募り、大学や国に対するインターン制度廃止の運動が盛り上がってきた。また卒後研修や古い医局講座制の持つ弊害などで、学生と教授会とのあつれきが深まっていった。改革を目指す青年医師連合の全国的な展開があり、毎日のようにクラス会が開かれ、卒業試験ボイコットやストライキにまで発展した。
ひとまずは学生自治会と教授会との妥協的な歩み寄りもあり、5月になって変則的に卒業し、インターンならぬ自主研修が始められた。そんな中で、私は、今まで漠然と考えていた無医村に出掛けて行こうなどという気持ちはなえて、精神科を専攻しようかという気が起こってきた。いくら個人が善意で努力しても限界があり、社会制度や仕組みの重要性に目覚めたといえる。また古い慣習や既成の権威に立ち向かうという貴重な経験を通して自分の殻が破れたように思う。
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