連載 感染症実地疫学・25【おわりに】
連載「感染症実地疫学」を終えて
岡部 信彦
1
1国立感染症研究所感染症情報センター
pp.1014
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101214
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2006年1月号から2007年12月号までの2年間,本誌にて,国立感染症研究所感染症情報センター(感染研情報センター)のスタッフおよびFETP(Field Epidemiology Training Program)研修生あるいは修了者による連載「感染症実地疫学(Field Epidemiology)」の企画を担当させて頂いた.
1996年大阪府堺市を中心とした腸管出血性大腸菌O157感染症のアウトブレイク時には,わが国には迅速に対応するサーベイランスや,現地における疫学調査を行うシステムは不十分であった.もちろん保健所においては,それまでにも食中毒等に対する疫学調査は行われており,ノウハウは培われていたが,多くの場合平常時のサーベイランスと連動し,広範に迅速に専門的に行えるものではなかった.情報センターの前身である国立予防衛生研究所感染症疫学部 井上栄部長(後の初代感染症情報センター長)は,「厚生省から疫学調査を依頼されても,それを行う人材はなく,臍(ほぞ)をかむ思いであった」と当時おっしゃっておられた.また米国CDC(Center for Disease Control and Prevention)からは,「日本で調査ができないのであれば我が方からEIS(Epidemic Intelligence Service:米国におけるFETP)を中心にしたチームを派遣しようか」という申し出もあり,厚生省担当課では対応に困惑したと聞いている.
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