連載 世界に届け! Boshi-Techo【最終回】
Boshi-Techo—ロシアへ,そして世界へ
坂本 ジェニファー理沙
1
,
柴沼 晃
1
,
神馬 征峰
1
1東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室
pp.340-345
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209392
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はじめに
ロシア連邦(以下,ロシア)と聞くと,極寒の気候,色とりどりのマトリョーシカやウォッカを想像されるかもしれない.ロシアは日本の約45倍,米国の約2倍の国土面積を誇る世界で最も広い国である.現在の人口は約1億4,700万人とされ,世界銀行の一人当たり国民総所得(GNI)に基づく分類によるとロシアは高中所得国に分類される.
1991年にソビエト連邦(以下,ソ連)が崩壊した後,ロシアでは大幅に人口が減少し,保健医療の状況も大きく変化した.しかし,2008年以降,人口減少幅は縮小し,2013年には出生率が死亡率を上回って人口の自然増加が回復した1).一方で,ソ連時代から低水準であったロシア国民の平均寿命は,まだ十分には解消されていない.世界保健機関(WHO)によると,2016年のロシア国民の平均寿命は女性77.2歳,男性66.4歳であり,男性の平均寿命が極めて短い.同年の経済協力開発機構(OECD)諸国平均と比べると,女性は6.1年,男性は11.5年短く,男女差もはるかに大きい2).
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