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あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書
阿彦 忠之
pp.358
発行日 2021年5月15日
Published Date 2021/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209631
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環境リスクの評価は,公害の健康被害の評価を原点としています.しかし,評価や管理の対象となる環境化学物質の拡大と多様化に伴い,リスク評価に関する考え方が,およそ10年のスパンで順次変化してきたことを,本号の特集を読んで理解できました.
本誌第78巻8号(2014年8月号)の特集「公害・環境問題の変貌と新展開」の中で,元滋賀大学長の宮本憲一先生が,公害対策基本法が制定された当初は生活環境の保全よりも経済成長を優先した「調和論」のもとで環境基準が設定されたものの,それに反対する世論が拡大して生活環境優先の法体系に改正された経緯に触れ,「公害対策は調和論でなく,人権と環境優先を原則とする」ことを強調されていました.多様化する環境リスクへの対応では,この原則を尊重しつつ,公害対策とは違った方向へと進化していることが分かりました.すなわち,公害対策としてのリスク評価においては,すでに公衆への被害が発生していることを前提とした評価であったのに対して,環境基本法の下での環境リスク評価は,公衆への被害が実在しないことを前提として,被害の「未然防止」を目指した評価へと変化したということで,「予防原則」を重視した方向への進化を今後も期待しているところです.
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