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国保加入者の健康と,保健医療福祉サービス利用の実態
2008年に,公的医療保険の加入者全員に特定健康診査(以下,健診)の実施が義務付けられました.市町村が保険者となる国民健康保険(以下,国保)は,保険者の中でも加入者一人当たりの平均所得が低く,また,保険料負担率が高いこと1)と,特定健診受診率が低いこと2)が報告されています.
健康に好ましくない生活習慣は所得に関係しているという報告があり3),また,所得・資産が低くなるほどより受診を控える傾向にあり,経済力により医療へのアクセスに「格差」が生じている実態も報告されています4).上述したような,所得が低い国保加入者の健康やサービスの受給の実態はどうなっているのでしょうか.筆者は,実態を踏まえた保健活動を模索する必要があるのではないかと考え,2011年当時に所属していた大学の所在地である大阪府羽曳野市と共同して,国保加入者で特定健診の対象となる2万人への調査に取り組みました5).健康実態について郵送で悉皆調査を行い,特定健診受診状況,医療費,介護給付費と突合しました.その結果,所得の低い方・経済的ゆとりのない方に①健診未受診が多いこと,②健診結果に問題のある方や,健康に好ましくない生活習慣・体調不良・自覚症状があるものの医療機関を受療する予定がない方の割合が多いことが分かりました.また,調査未回答者に所得の低い方,健診未受診,医療機関未受療の方の割合が多いことが明らかになりました5).また,調査の自由記載欄には
「これから先,病気になったときの医療費などを考えると心配が尽きません」
「市にサービスについて尋ねたいが,先立つもの(お金)がないので行かない.相談しにくい」
「健診を受けた後,市担当者から電話で再受診を要請されるが,受診には費用も掛かるし…」
などという経済面での意見が多く寄せられました.
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