特集 企業経営と公衆衛生の接点
SDGs達成に向けて—企業は社会やESG投資家からどのように評価されるのか
村上 芽
1
1株式会社日本総合研究所 創発戦略センター
pp.262-266
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209115
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持続可能な開発目標とパリ協定
2015年9月,国際連合(国連)総会で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」1)が採択された.「2030アジェンダ」とは,2030年に向けて国際社会の共通の課題や目標,行動すべき内容をまとめた戦略のことを意味する.この中に,17の目標からなる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)がある.SDGsは,貧困・飢餓・健康・福祉・教育・ジェンダー・平等・差別といった社会課題,エネルギー・技術革新・働き方・経済成長といった経済課題,気候変動・森林や海洋の保全・生物多様性保全・資源循環といった環境課題の全てを対象としている.また,「誰一人取り残さない」をキーフレーズとして,開発途上国だけではなく,先進国内における格差などの課題も対象としている.これらは,公共政策の範疇で立ち向かうには困難な規模であるため,企業がビジネスを通じて課題解決に取り組むことと,民間資金を導入することが強く期待されている.
SDGsが企業の行動に求めるのは,社会,環境,経済に関する課題解決に資するような製品やサービスを提供することである.同時に,課題を引き起こすような事業活動をやめることも必要不可欠である.SDGsの採択と前後して,企業は環境汚染や人権侵害などを引き起こさないように注意を払う一方で,SDGsに示された課題解決に貢献する事業をいかに行うかを考え,いかに経営資源を振り向けるかに変化し始めている.
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