特集 人獣共通感染症—獣医衛生領域から見た対策
ウシの結核病とブルセラ病の特徴,およびその対策
山本 健久
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1国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 ウイルス・疫学研究領域 疫学ユニット
pp.22-27
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209052
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はじめに
経済動物である家畜における伝染病対策の考え方は,当然,ヒトにおけるそれとは大きく異なっている.ヒトでの対策では,伝染病から個人を守ることに主眼が置かれるのに対し,家畜においては,家畜群の維持や生産性の確保が優先される.また,その疾病がヒトへの病原性を持つ場合には,ヒトの健康の確保が最優先される.また,対策の方法として,ヒトでは,個人の健康と生命を確保しつつ伝染病の流行を抑制する対策がとられるのに対して,家畜においては,群の保全やヒトの健康を確保するためには,感染個体や感染の疑いがある個体を積極的に殺処分することも多い.
ウシの結核病とブルセラ病は,家畜群における健康の確保というよりも,ヒトの健康の確保を目的として家畜側での疾病対策が実施された最初の例といえる.現在では,両疾病の重要性を背景にして,両疾病の清浄性は国産畜産物を海外に輸出するうえで重要となっている.両疾病の特徴を踏まえたうえで,これまでに実施されてきた対策を振り返り,現在の動向を知ることは,わが国の人畜共通感染症対策を俯瞰することにつながる.
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