特集 ヒトと家畜・ペット・野生動物の感染症―口蹄疫から学ぶ
ブルセラ症と炭疽
江崎 孝行
1
1岐阜大学大学院/医学系研究科・病原体制御分野
pp.19-22
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101993
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はじめに
ブルセラ症を起こす病原体5種類のうち,Brucella canis(=Brucella melitensis pathovar Canis:犬流産菌=B. canis)の発症はわが国でも散発しており,ペットが重要な随伴動物になっている現状で,しばしば社会問題を引き起こしてきた.その他の牛,羊,豚に感染するブルセラ症は稀であるので,本稿ではB. canisに限定して紹介する.
一方,炭疽を起こす炭疽菌は散発的に野生動物から分離される事例があるが,わが国の人発症例は国内では1994年に東京都と宮城県で2人の感染者が出て以来,公式な報告はない.筆者の40年の感染症研究でも,原因不明の肺炎で死亡した患者1例(病理解剖で発見)しかなく,本稿では疾病の詳細を述べるより,疾病の検出に伴うわが国の検査-教育体制の課題を中心に紹介する.
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