特集 人獣共通感染症—獣医衛生領域から見た対策
狂犬病とその対策—日本の狂犬病対策に必要な「One Health」の実践と継続
井上 智
1
,
堀田 明豊
2
1国立感染症研究所獣医科学部第二室
2国立感染症研究所獣医科学部
pp.28-34
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209053
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はじめに
狂犬病は世界中で毎年59,000人以上が死亡しているウイルス性の人獣共通感染症〔別称:動物由来共通感染症,人畜共通感染症,ズーノーシス(zoonosis)〕である.いったん狂犬病を発症すると,急性,進行性,致死性の脳炎を示して10日以内に100%死亡するが,99%以上が狂犬病を発症したイヌによる咬傷を原因とした感染である.その30〜50%は15歳以下の子どもである.アジアは世界有数の狂犬病流行地域であり,毎年24,000人以上が狂犬病で死亡している.その背景には,1,900万人以上の咬傷被害者が報告されており,狂犬病の発症を防ぐため,400万人以上が曝露後予防接種(post-exposure prophylaxis:PEP)を行っている1)〜3).
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