特集 人獣共通感染症—獣医衛生領域から見た対策
獣医師の社会的役割と現状
筒井 俊之
1
1国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 企画管理部
pp.6-8
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209049
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獣医師の社会的役割を考えるためには,獣医師としての資格がどのような職域で活用されているかを知る必要がある.獣医師の就業状況は獣医師法によって2年に一度,農林水産省に届け出ることが義務付けられており,その詳細が公表されている.それによると,2016年末現在で届出のあった獣医師の総数は約3万9千人であり,うち半数が小動物や産業動物の臨床業務に従事していた1).約1/4は公務員であり,残りの約1/4は製薬会社や飼料会社などの民間企業,大学・研究機関などの法人で働く獣医師や,獣医事に携わっていない有資格者となっていた(図1)1).一般に獣医師の仕事というと,イヌやネコの診療業務をイメージするが,実際にペットの診療を行っている獣医師は全体の4割程度にすぎず,社会が獣医師の専門性に求めるものは,飼育動物の診療にとどまらず,広い職域に及んでいることが分かる.
本特集が掲げる「人獣共通感染症」への対策においては,特に公務員獣医師が大きな社会的役割を果たしている.2016年現在で9,000人以上の獣医師が国や地方自治体の職員として公衆衛生や農林水産関連の業務に従事している2).公務員のうち国家公務員は全体の数%にすぎず,公務員獣医師の74%は都道府県の職員が占めている.また,残りの20%は市町村職員で,主に政令指定都市などの大都市で公衆衛生に関する業務に従事している.
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