特集 人獣共通感染症—獣医衛生領域から見た対策
扉
筒井 俊之
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1国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 企画管理部
pp.5
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209048
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近年,世界で発生するヒトに関係する新興・再興感染症の多くが動物由来であるといわれるように,ヒトに健康被害を与える公衆衛生上の脅威として動物の感染症が注目されています.動物感染症のまん延は動物集団にも直接的な悪影響を及ぼすため,必要に応じてさまざまな獣医衛生対策が講じられています.特に,多様な畜産業を支える家畜の重要な伝染病については,発生の予防やまん延防止を目的とした対策の制度的な枠組みが整備されています.
動物に発生した疾病が人獣共通感染症の場合は,動物への被害はもとより,感染による直接的なヒトへの健康被害や社会的な影響による産業への間接的な被害もあることから,より徹底した対策を講じる必要があります.例えば,高病原性鳥インフルエンザが発生した場合,発生農場や周辺地域では早期封じ込めのための厳重な対策がとられます.これは,ニワトリを飼育する生産者を保護する対策であると同時に,ヒトへの感染機会を低減させる公衆衛生対策でもあります.このように,獣医師が中心となって動物側から取り組んでいる獣医衛生対策は多岐にわたっており,それはヒトの公衆衛生対策にも貢献しています.
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